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義眼はどのようなもの?

 義眼は、英語ではartificial eyeやocular prosthesis, prosthetic eyeといいます。


 義眼は樹脂製で、お椀の蓋のような形をしています。


 眼球摘出の後に、ある程度の厚みのある義眼を入れます。眼球萎縮など眼球の残っている場合には、薄い義眼を使うことがあります。眼球摘出の術後に義眼の入るスペースを確保するために、透明な仮の義眼を入れることがあります。

義眼はどのくらいお金がかかるの?

 義眼は、義眼床の状態に合わせて作成する、オーダーメイド義眼が一般的です。費用は義眼作成者により異なりますが、10万円前後が一般的です。費用は義眼作成者に支払い、後で還付金をもらうことになります。手続きは、障害者手帳の有無により異なります。所属する健康保険組合などに確認してください。


 以前は医療機関から意見書というものを発行していましたが、現在は健康保険組合に確認の上で「治療用装具製作指示装着証明書」を、あるいは障害者の場合は福祉担当部門から診断書・意見書を取り寄せ、医師に必要事項を記載してもらい、申請をする流れになっています。全額ではありませんが、一定の還付金があります。


全国健康保険協会:https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r56/

義眼はどのように手入れするの?

 義眼は、義眼床(結膜で覆われたスペース)に入れるもので、出し入れが可能です。医師、もしくは義眼師の指示に従って洗浄します。


 洗浄の頻度はいろいろな考え方があります。義眼台の入っていない場合には、眼脂がたまりやすいので1日1回は洗浄したほうが良いと考えます。一方で義眼台が入っている場合は眼脂がたまることは少なく、一方で着脱の際に感染の危険や眼瞼下垂を生じるリスクがあることから、海外では自己洗浄せず、数か月に1回義眼師が洗浄するだけということもあります。


 寝ているときの扱いもいろいろな考え方があります。炎症の強いときなどは刺激を減らすため外していたほうがよいです。一方で義眼がないと寝ている間に結膜が乾燥して、朝に義眼を入れにくくなったり、結膜を傷つけることがあります。義眼の扱いは義眼床の状態をみて、担当医が指示します。

義眼はどのくらい使えるの? いつ作り変えるの?

 小児の場合は成長に伴ってサイズアップを行います。


 成人でも、義眼床のへんかでずれやすくなったり、年齢による顔の変化で左右差が目立つようになるとつくりかえる必要があります。長期間使用すると細かい傷ができたり汚れが付着したりするため、定期的なメンテナンスや作り変えが必要になります。


 制度上は、耐用年数の2年が経過すると費用の補助が出ることが多いですが、自治体によって差があるようです。

義眼は動くの?

 眼球を摘出した場合、義眼台というものを埋め込むと義眼はある程度動きますが、個人差が大きいです。


 ペグという棒状のものを義眼台に差し込み、これに義眼をつけるとよく動きます。ただ、結膜から異物が露出している状態で、感染の危険があり、海外でも一部で使われているだけで、国内では行っていません。昔は磁石を使って義眼が動くようにしていましたが、MRIが使えなくなってしまうため、現在は使われていません。


 結膜と筋肉を縫い合わせて、筋肉の動きをうまく義眼床に伝えることで義眼の動きを期待する手術方法もあります。


 一方で、義眼台がない場合には、筋肉の動きを義眼床に伝えることができず、また義眼も厚くて重いので、動きはありません。

義眼と義眼台の違いは?

 義眼は、結膜で覆われた義眼床というスペースに入れる、着脱可能なものです。


 義眼台は、結膜の中に埋め込んで容積を補うもので、合併症を生じなければ生涯入れたままになります。

義眼台についての説明イラスト

義眼台は入れたほうが良いの?

 義眼台のメリットは、容積を補うことで義眼を薄くすることができ、整容面でも優れ、義眼の動きも期待できます(全例ではありません)。義眼台のデメリットは、素材に対するアレルギー反応、義眼台の露出による感染、義眼台の偏位などがあります。義眼台が偏位すると、再手術で位置の修正や義眼台の入れ替えが必要になる、小さめの義眼台に変更すると思ったほど整容面の効果が得られない、再手術してもまた偏位してしまう、最終的に義眼台が入らなくなる、などの可能性があります。

障害者ではないのに補装具である義眼を使ってよいの?

 義眼は補装具のひとつです。補装具とは、障害者が「損なわれた身体機能を補完・代替する用具」として支給が認められているものです。目の場合、他眼が0.6以上見えていると視覚障害者ではありません。ただ、身体機能が損なわれていることは同じですので、障害者に準じて義眼を作成しています。

 障害者ではない場合、障害者として義眼の支給を受けることはできません。健康保険法によって、「眼球摘出後の眼窩保護を目的」として、療養費の支給が得られることがあります。

義眼は治療用装具? 補装具?

 治療用装具の使用目的は「治療段階における症状の回復および改善」であり、補装具は「症状固定後の日常生活および職業生活上の利便の向上」と規定されています。義眼の場合、眼球摘出等の術後に症状が固定した状態で、損なわれた身体機能を補完・代替するために装用すると考えると、補装具に該当し、耐用年数2年になります。


 小児の場合など、年齢とともに眼窩の状態が変化し、適切な大きさの義眼を装用することで眼窩の発育が促されるため、症状が固定しているとはいえず、治療用装具に該当します。障害者ではない方が、障害者用の補装具を使用するという点と合わせ、制度のはざまにある状態です。

水泳をしてもよいの?

 義眼は、樹脂でできていて、プールの水でも海水でも問題ありません。義眼をつけたままで大丈夫です。ただし、飛び込みをする場合は、水流で義眼が外れてしまうことがありますので、ゴーグルをすることを勧めます。


 義眼だからといって、水泳の後に洗眼や点眼をする必要はありません。親の世代が子どもであった頃は、塩素の濃度が高かったこともあって、プール後に洗眼や点眼を使っていました。今は一律に勧めることはしていません。

砂場で遊んでよい? 砂が入ったらどうする?

 砂場で遊ぶことは問題ありません。義眼でなくても、砂が入ってしまったら水道水で洗い流したりすると思います。義眼も同じで、まずは洗い流すことです。洗い流しても痛みがあるときには、義眼の裏に砂が残っている可能性があります。自分で義眼を外せれば外して洗う、自分ではできない場合には眼科の診察を受ける、という対応になると思います。

義眼の眼をぶつけたけど大丈夫?

 遊んでいて、友達の手がぶつかったり、ボールがぶつかったりすることはよくあります。義眼は固いので、割れることはほとんどありません。逆に義眼とボールで挟まれたまぶたが切れてしまうことはあります。出血や、腫れが強い、義眼が割れているなどがあれば眼科を受診してください。ぶつけても変化がなさそうであればほとんど心配ありません。


 それよりも、残っている眼球の方をぶつけたときの方が心配で、開けづらい、見づらいという症状があれば必ず眼科を受診してください。

MRIをとるときには義眼を外した方が良いの?

 義眼は、虹彩の色などを付けていますが、色素の中には微量ですが金属を含むことがあります。そのままMRIを行うと、画像が乱れたり、熱を持ってしまうことがあります。そのため、MRIを行うときには義眼を外した方が良いです。


 義眼台という、内部に埋め込んであるものは、現在はMRIに影響しないものですので、そのまま撮影してかまいません(例外として、30年以上前には磁石を使った義眼台があり、その場合にはMRIが撮影できません)。

目薬を使うの? 使ってよいの?

 義眼を使っているから目薬を使うという必要はありません。ただ、義眼だから使うことのできないという目薬はありません。目やにが多い時には抗生剤の目薬、乾燥するときにはドライアイの目薬など、症状に応じて使って構いません。

保育園や幼稚園の先生にどう伝える?

 義眼を使っていることは伝えておいた方が良いです。義眼だから特別なことをお願いする必要はありません。こすって義眼が回転したり、外れてしまった場合には、先生に入れてもらうことはむつかしいと思いますので、


・外れてしまったらなくさないように保管する


・あらかじめ眼帯やガーゼを預けておいて貼ってもらう


ということをお願いしておくとよいと思います。

学校の先生にどう伝える?

 小学校に入るまでに、自分で義眼の着脱ができるようになっておくと安心です。自分で着脱ができない場合には、幼稚園の時の対応と同じことを先生に伝えることになります。自分で着脱ができる場合には、保健室を使わせてもらうなどの配慮をお願いしておくとよいと思います。

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